偶然なんだけど、きょうは軍事ネタでおもしろいニュースが3つはいってきた。
その1。東京新聞の
「米、核兵器改良108兆円 今後30年、老朽化に対応」という記事。
要するに、戦略核兵器を維持するため、このくらいはかかるよっていう報告です。
そりゃね、今後の核軍縮を考慮しても、それくらいにはなるでしょう。ふつうに考えて。
戦略核戦力っていうと、空軍のICBM、空中発射巡航ミサイル、海軍のSSBNがいわゆる3本柱だけど、、そのうち現代的兵器といえるのは、B-52、B-1、B-2から発射するACMだけ。SSBN搭載のトライデントIIは築30年、ICBMのミニットマンIIIにいたっては、築半世紀になんなんとしてるわけです。
とくに、ミニットマンは後継のピースメーカーが先に退役して、ミゼットマンは開発中止という事情もあって、実戦配備にはついてるものの、信頼性には疑問符がいっぱいつくはず。
ここだけでも、新型に更新しないとならないし、それには数十兆円が必要でしょう。
海軍のSSBNのウェポンシステムについては、2030年代後半には更新時期を迎えるから、ここも数十兆円。
これはもうすでに予算化がはじまってると思った。いちおう、トライデントはそのまま使うとか。
唯一、現代化された空軍航空戦力にしても、戦略爆撃機を将来にわたって維持するとすると、B-52の後継を考えないと。ここがいちばん高価かな。
という感じで、ずいぶん前からいわれてることばかりだけど、まとめるととんでもない金額になるのね。
でも、それだけの記事で、新鮮味はありませんが。
その2。同じく東京新聞の
「ロシア、80以上の新艦船導入 2020年までに黒海艦隊」という記事。
記事の書き方が素人くさくて、意味が曖昧になってるけど、要するに、プーチンが黒海から地中海にかけての軍事プレゼンスを維持するため、新造艦艇を80隻以上、黒海艦隊に配備するってぶちあげたっていうお話。
まあ、ひと言でいうと、ガセですけどね。プロパガンダというか。
ロスキーには、その能力がないんですから。ヽ( ´-`)ノ
フランスから買ったミストラル級強襲揚陸艦のうち1隻を黒海にまわすとか、建造が再開されたキロ級潜水艦を数隻まわすとか、そのくらいが関の山。
プラス、安価なミサイル艇を10隻くらいそろえられるとしても、そこまででしょう。ここ30年、駆逐艦の1隻もつくれない国がなにをいうか、ってな感じで。
せいぜいがんばっても、小型艇をふくめて20隻が限界のところ、80隻はいくらなんでもぶちあげすぎ。だからガセなわけですが。
一方、情報として、そーいう国際的常識を持たないまま、結果的にプロパガンダ的プレス・リリースの裏を読みとれずに記事にしちゃう東京新聞も……ねえ。
あそこ、いい新聞だとは思うんだけど、軍事関係には疎すぎるきらいが。最近はほかも似たようなもんだけど。
と、いうのはまだマクラ。
(´・ω・`)
その3。これがいちばんおもしろかった。まいど笑わせてくれるAFPの
「米軍、シリア空爆で最新鋭のF22戦闘機を初投入」。
やー、すげえっすよ。以下引用。
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長らく開発中だった次世代ステルス戦闘機「F22ラプター(
F-22 Raptor)」の実戦能力を試す初めての機会となった。
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えーと。(^^;;;
開発が終わったのは10年近く前。製造自体が終了したのが2011年だから、かれこれまる3年以上たつんだよねー。
もうこの段階で、みごとな記事ということで。(^^;
自分がなにを書いてるか、記者自身がわかってないから、この段階で中味は無意味だって断定できちゃうわけですが(オープン・データを見ながら書いたのがミエミエ)、F-22が空爆に参加したのが事実だとすると、これはおもしろいかも。理由不明というか、その投入自体、意味不明というか。
考えられる理由。
1.対地攻撃能力もあるんだよってところを見せたかったのか?
2.実戦に参加したっていう実績をつくりたかったのか?
3.なんらかの新型ウェポン・システムを実験したのか?
1はないよね。対地攻撃能力があるっていっても、テキストロンのスコーピオンのほうがまたましってレベルだし、いまとなってはどっかに売りこむすべもないし。
3もなさそう。F-22はものすごくタイトな設計だから、新しい兵器の実験には不向きというか、実験不可能といっていいはずですから。
なので、2ですか。
飛来音をたよりに撃墜されるリスクをおかしてまで(to コソボのF-117)、戦場上空を飛ばす理由がわかんないけど、まあそのへんがアメリカさんなのかな。
でも、何年か前、センチネルがイランで落ちてるよねえ。(^^;
なにか悪いことが起こらなければいいんですが。(´・ω・`)
という3題なんですが……信じられないほどいいかげんな報道ばっかりなんだよね、こうやって見てみると。
よくいわれるような「平和ぼけ」でかたづけば、まだ救いがあるかもしれないけど、すでに報道機関の能力という根本的な部分が「死んでる」といっていいわけで、危機感をおぼえるのも、また事実であります。
今回のは、掛け値なしに、相当ひどいよね。とりわけ、2と3。
もちろん、1も「いまごろ、なにいってんの?」レベルですが。